理事長挨拶
近年、不妊症医療の技術的進歩は、超音波診断、内視鏡治療、遺伝子組換技術による排卵誘発剤の開発など目覚ましいものがあります。特に、生殖補助医療(Assisted Reproductive Treatment ; ART)と称される高度先進医療により、1978年の体外受精児第1号が英国で誕生して以来、わが国でも既に24万人以上のART児が誕生しています。平成22年度にわが国で出生したART児は、26,680人にのぼります。それに対して年々出生率は低下しており、総出生児数の1.7%(60人に1人)がARTによる出生児ということになります。
一方で、わが国には推定140万組以上の不妊夫婦がいると言われております。このうち、きちんと不妊治療を受けている夫婦はわずか40万組と報告されています。なぜこんなに不妊の受診率が低いのでしょうか?この原因として、不妊医療の中でもARTに係る高額な治療費(1回20~50万円)、病院に通院する期間や治療の副作用でやむを得ず仕事を欠勤せざるを得なくなるような場合に、社会的な圧迫や制約が不妊夫婦に対して受診を躊躇させている、大きな原因と考えられています。さらに、日常健康な生活を営んでいる男女では、自分だけはいつでも子供を作ることが出来る、不妊であるはずがないと思い込んでいるのです。しかし、不妊は現在の自分の健康状態と無関係な原因によって起こるやっかいな病気だということを忘れてはなりません。では、どんなことが不妊の原因になるのでしょうか?
実は思春期から生殖年齢にある男女の生活環境、晩婚晩産に伴う加齢、不健康な性行為による性行為感染症、喫煙や過度なダイエットによる月経不順、卵巣機能不全、肥満、潜在性糖尿病などの生活習慣病や子宮内膜症、子宮筋腫など、すべてが不妊の原因になります。これらによる不妊予備軍は、現在の不妊夫婦の何倍も増加傾向にあると推定されております。ですから、どんなに不妊治療の技術が進歩しても、不妊は決してなくなることはありません。むしろこれらの原因による不妊は増えていると言わざるを得ません。
このような現状にあたり、NPO法人日本不妊予防協会を設立する目的は、われわれの一生を通して、健康社会医学、生殖医学に基づいた不妊予防の研究や研修、一般男女に対する不妊原因と予防法の教育と啓蒙活動、さらに、効果的かつ経済的な治療法の開発等を行うとともに、これらの進歩と発展を基として、国民すべての健康な生殖機能保持と増進を促し、健全で幸せな家族生活の充実を全うすることであります。
NPO法人 日本不妊予防協会
理事長 久保 春海
「不妊予防のための大切なひとこと」
豊かで平和で自由な、すばらしい毎日、良い時代を迎えています。ですがそこに新たな問題も生じています。子供の数が減っています。年金も心配される事態です。子供が欲しいのに授かれない。深刻な問題です。豊かな生活を謳歌しているうちに失ったもの、それは子供を造る時間です。もともと神様が用意した子供が出来る仕組みは、時間が掛るように出来ています。玉のようなみどり児が生まれるまでには流産という試練も有ります。そして、ヒトの子供が大人になるのに二十年かかるので、母になる女性には子育ての時間を残して子づくりを終えるよう閉経がやってきます。何事にも旬が有り、挙児すなわち子を授かる繁殖の期間に限りがあること、この仕組みを知って時間的な備えを養って頂くこと、これが不妊予防です。不妊予防運動の普及と共に、一般の方にも次のような認識も高まって参りました。すなわち妊娠する機能すなわちヒト妊孕能は十二歳から四十二歳までのおよそ三十年間に限られ、月一回の排卵として一生で約四百回のチャンスがあること。母親の子宮の中、五か月の女性胎児には凡そ七百万個の卵を含む卵巣が出来、誕生時二百万個まで減少し、新たに卵が出来ることは無くなること。さらに初潮が発来する十二歳頃には卵巣に五十万個の卵が残っているが三十八歳になると二万個しか残っていないこと。そして、卵巣に残る卵は第一減数分裂の前期で眠っているため、卵の数の減少と並行して卵の質も低下し、そのために妊娠しにくくなり妊娠しても流産することが多くなること等です。小学六年生の時、「避妊しないと妊娠するよ」と教えられ、反対に「避妊を解除したら、たちまち妊娠するわよ」と錯覚している方が大変多いようです。二年間二十四回のチャンスで児が出来ないカップルを不妊症と呼ぶくらいに数多くのチャンスで稀にしか授かれないのです。お二人のお子さんは四人の御両親のお孫さんです。八人の祖父母の曾孫さんです。沢山の御先祖様の末裔をお二人でつくるので卵子も精子も皆違います。とにかくチャンスを増やしてください。絶滅防止の多様性と進化の秘密がそこに有ります。あまり効率は良くないのです。晩婚化とともに残された時間を有効に活用すべきです。出来るだけ早く生殖医療の専門医師に相談し、スクリーニング検査をして適切なアドバイスを受けましょう。
NPO法人 日本不妊予防協会
副理事長 岡本純英
役員 | |
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理事長 | 久保春海 |
副理事長 | 岡本純英 木村好秀 斎藤益子 菅原延夫 |
名誉理事長 | 鈴木秋悦 |
名誉顧問 | 鈴木雅州 |
監事 | 松田静冶 |
理事 | 東口篤司 石塚文平 岩本晃明 宇都宮隆史 遠藤俊明 |
小田瑞恵 京野廣一 久慈直昭 黒島淳子 東条龍太郎 | |
年森清隆 橋詰直孝 福田勝 森本義晴 吉田淳 | |
評議員 |
阿部純 安部祐司 荒木康久 池永秀幸 石間友明 伊藤哲 岩城妙子 臼井彰 北井啓勝 倉沢慈明 黒田優佳子 己斐秀樹 小島栄吉 桜井明弘 椎名一雄 柴原浩章 渋井幸弘 竹内裕之 辰巳賢一 玉舎輝彦 中野英之 永尾光一 野口靖之 藤井俊策 真島靖重 松田和洋 松峯寿美 松本亜樹子 吉田仁秋 |
幹事 | 菊田映美 菅睦雄 宮本さおり 渡邉知佳子 |
本部事務長 | 菅睦雄 |
事務局長 | 久保忠彦 |